大和に戻った倭建は早速父に報告したが
父から称賛の言葉をもらうことはできなかった
父は東国の平定を厳命した
倭建は席の暖まる暇もなく
都をあとにすることになった
下向する途中で伊勢に寄って
叔母の倭比売命と対面した
そこで倭建は叔母に弱音を吐いた
「西を平穏にして帰ってきたのに兵士も与えず
ただちに東へむかえと言う
父は私が死ねばいいと思っているようだ」と
倭比売命は草薙剣(クサナギノツルギ)を授けた
須佐之男命が八俣の大蛇の体内から取り出した聖剣である
もしものことがあればこれを開けよと
ひとつの袋も一緒に渡した
それらを持って尾張国の美夜受比売(ミヤズヒメ)を訪ね
結婚の約束をしたあと
抵抗する神々や王権に従わない氏族を次々に打ち負かして
倭建は東海道地域を東に進んでいった
静岡の焼津まで来たとき
地元の豪族にだまされて
野原で火攻めにあった
炎に包まれながら
倭建は叔母の言葉を思い出し
もらった袋を開いた
袋の中には火打石が入っていた
火打石を使って向火を点けると
迫る火の勢いは弱まった
窮地を出しった倭建は
豪族たちを斬り殺して焼いた
房総半島へ向かうために走水海(浦賀水道)を船で渡っていると
海峡の神が嵐を起こした
妃の弟橘比売(オトタチバナヒメ)は神の怒りを鎮めようと
荒れ狂う海に身を投げてしまった
海は急に穏やかになり船を進めることができるようになった
7日後に弟橘比売の櫛が海岸に流れ着いた
倭建は悲しみの中で弟橘比売の墓を作り
その櫛を納めた
北方を平安にして
足柄峠まで戻り
そこから山梨に入って酒祈宮に到着した
戦いに明け暮れる日々を思い
常陸(茨城県)から何夜経ったかと倭建がうたうと
酒祈宮の灯火番の老人が9夜だと歌で返した
その機転と風雅さをたたえ
老人を地方長官に任命した