欧米のお墓を見ていると
どこか日本のお墓とはニュアンスが違うことに気がつく
お墓の形状や石の種類の問題ではなく
お墓の意味そのものが違うようだ
欧米のお墓には、死者個人の名前が石に刻まれているが
日本のお墓には、個人名が刻まれることはほとんどない
かつての古いお墓には、戒名が刻まれていたが
近代になって、「◯◯家之墓」と刻まれるようになった
死者個人の名前は家の中に吸収され
墓誌に個人名まで記さない限りは
一見して、そこに誰が眠っているのかはわからないようになっている
欧米のお墓には何が刻まれているのであろうか?
例を上げてみると
「◯◯の心から愛する夫○○、◯◯そして◯◯の大切な父親、◯◯の祖父と曾祖父、悲しみの記憶を超えて燦然と輝け」
「◯◯の愛の記録、故人の名前、生没年、故人の年齢、すべての人に尊敬され愛された」
などが刻まれている
「尊敬され愛された」などのように故人を顕彰してはいるが
基本的には、お墓は故人のために設けられた施設なのである
欧米では、一般的にお墓とは「遺体(または遺骨)の置き場」と考えられている
この考えが、日本のお墓の定義と異なっているのである
欧米では、墓地を死者のための施設であると考え
墓地で、死者を追悼、追憶する…というのが基本的な定義である
これに対して日本は
墓地を「死者のための施設」と考えることはあまりない
「◯◯家之墓」と刻まれるまでは
個人の戒名などを刻んでいたので、お墓の目的は故人を供養するためである
それまでは、お墓は個人や夫婦単位で建立されるのが一般的だった
しかし、家墓が一般的になってくると
その事情は変化してくる
故人は、「祖先」という、ひとくくりでまとめられ
お墓は子孫によって継承されることととなる
つまり、お墓は祖先を崇拝するシンボル的な意味合いを持ってきたのである
それは、個人の供養というより
「祭祀の場」としての意味合いが強くなってきた
これは、個人を供養する思想が無くなった…と言っているのではない
追善供養など、死者個人にたいしての供養も行われているが
お墓に限った話では、「祖先の祭祀の施設」という意味合いが強くなってきたのである
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