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家族の形に対応し続けるお墓

何度もこの場で、以前の日本のお墓のありについては語ってきたが

昔のお墓は、先祖代々受け継がれていくものであった

 

昔のように、その土地を離れることなく

産まれてから、死ぬまでを過ごす場合は

そのお墓の形態でも不便はないのだが

現代のように、ライフスタイルが変化することで

転勤や引っ越しが頻繁にあり

家族、親族が同じ部落で生活することは少なく

全国に家族が散らばる例も少なくない

 

そんなライフスタイルの変化の上において

お墓を同じ土地で代々守っていくことは

物理的に不可能になってきた

 

そのような変化から

人々は、お墓が先祖代々眠る場所から

故人よりも、残された家族の想いがお墓に反映されるようになってくる

 

それは、墓石に彫刻する文字を見ても理解することができる

 

「◯◯家の墓」「先祖代々の墓」と彫刻する代わりに

「やすらぎ」「静」「愛」「夢」「慈」などを彫刻する人も多くなってきた

 

これは、血縁の縦系列の関係から

生前の人間関係を表す、横のつながりへと変化していっているからだろう

 

そのライフスタイルの変化は

家族の形態を変え、お墓の形態を変えていった

 

親族一同が同じ地域に住むことが少なく

各地おのおの好きな場所へと移住し

終の住処は、故郷と全く違う場所になることも少なくない

 

その家族の形の変化は、1955年前後から顕著に表れてくることになる

少子高齢化が進み、核家族化、単身者の増加もこの時期である

 

産業構造の変化は、就業構造の変化と都市化を引き起こし

その結果、当然のように家族の形態が変化してくる

 

この変化は、形だけではなく

家族関係や、家族に対する意識の変化ももたらすこととなる

 

これまでの家族の形は崩れ始め

お墓は個人化する家族に対する需要に対応せざるを得ない状況を迎えることとなる

 

そして、それは無縁化の促進も同時に引き起こしていくことになるのである

 

人はいずれ死を迎えるので

お墓は必要なのだが

それを継承する人がいないので

個人墓の普及や、無縁墓の増大に繋がっていったのである

 

継承システムの見直しは

同時にお墓そのものの意味も変化させていくことになるのである

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