人類で最初に死者を埋葬したと思われるのは
ネアンデルタール人であると考えられる
ネアンデルタール人の埋葬が人類のお墓の原点のようである
人と違い、動物は埋葬儀礼という文化を持っていない
そして、人はこの埋葬という行為から
死後の世界と人の交換という「宗教」を生み出した
そして、意味や価値を共有している社会の中で
さまざまな交換が行なわれている
シンボルは、価値があるから交換できるのではなく
交換できる社会があるから価値が生まれるのである
ネアンデルタール人は、今から6万年前に存在していたと推定されている
その調査をアメリカのコロンビア大学の人類学のラルフ・S・ソレッキ教授と、その妻である考古学者のローズ夫人が10年間に渡ってネアンデルタール人について調査を行なっている
その調査でわかったことの中に
ネアンデルタール人が埋葬の際に死者に花を飾っていたというのである
今でこそ、死者に花を捧げるのは一般的なことなので
ネアンデルタール人が死者に花を飾っていたとしても
不思議に思わないかもしれないが
しかし、なぜ花を飾ろうと考えたのかを探っていくと
そこには、宗教的な交換構造を垣間見ることができる
先ほども書いたように
動物は、埋葬する…という習慣を持っていない
埋葬は、人だけが行う行為なのである
埋葬するのは、臭いからでも不衛生だとかいうネガティブな理由ではない
ネガティブな理由であれば、花などは飾ったりしないだろう
花を飾る行為には
死者(遺体)に価値を見出していたからだろう
その死者に、価値を見出す社会の交換構造がある…ということである
その価値とは、古い命と新しい命の交換である
新しい命は、たとえ母親のお腹を経由してきたとしても
古い命を、浄化して価値を高めることにより
あの世から送られてきたものとして考えられる
つまり死者を「あちら側」の世界に送り出すことにより
新しい命…つまり赤ん坊を「あちら側」から送ってもらうのである
人は死んでしまえば、単なる骨と蛋白と、脂肪の塊に過ぎない
死体は、交換されることで、それ自体価値を持つことになる
だから大事にする
そして、その価値を人々は「魂」と呼ぶようになるのである
あちら側の存在に死者を送ったことを伝えて
新しい命を送り返してくれることを求めて
儀礼として、埋葬を執り行なったのである
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