- 2010-12-15 (水) 22:21
- コラム | 行方不明者の墓~一家族の決断~
「仏壇までは買えないけど、供養の場を整えたい。弟の写真を送ってもらえないだろうか?」
と、私は母に言った
行方不明の…死亡した証拠もない弟を供養する-
誰に認められなくてもいい
私一人の儀式でもいい…
そう思っていた
電話を切って、しばらくしたら
再度、母から電話がかかってきた
「お父さんが『もしそうだったとしたら、来年は23回忌だ。家族で法要でもしよう』って言ったの。施設に残っている戸籍を除籍して、認知死亡届を出して、お坊さん呼んで、戒名を付けてもらおうか!」
母がそう言った瞬間
私は、なぜだかわからないけど号泣した
「お母さん!ありがとう!…ありがとう!ありがとう!!」
私は、泣きながら母にお礼を言っている
母も泣いている
「ありがとう。なんだか、ホッとした。ありがとう…」
私が母にお礼を言うのは、ちょっとおかしい…
おそらく、弟が私の口を使って、母にお礼を言ったに違いないと思った
弟は、知的障害があって、話はできなかったが
きっと、こう言いたかったのかもしれない
【お姉ちゃん、ボク、もうそこにはいないんだよ。はやく気づいて!お父さんとお母さんに教えて!!ボク、寂しいよ~!!お姉ちゃん、どうして無視するの~?】
そして決意した家族に、どうしてもお礼を言いたかったのかもしれない
翌日、私は近くの仏具店に足を運んだ
おりんのセットと、ロウソク立て、香炉、花瓶などのセットを購入した
ホンモノ(?)は、実家で用意すると思われるので
私は、簡素に整えた
私の身の丈に合った、安くてシンプルだけどステキな道具だ
22年間も無視してしまったこともあり
お詫びも兼ねて、朝晩は必ずお参りしたいと考えていたので
身近に用意しておきたかった
ホームセンターで
小さなテーブル、座布団、道具を置くランチョンマットも購入
家に帰って、道具を整える様子を見て
小学生の3人の娘達は不思議がる
私は、正直に説明をした
「22年間も放っておいてしまったから、今日から22年間分のお参りをしたい。お母さん一人では、間に合わないから手伝ってくれるかな?」
小学校6年生の長女が自分で作ったゼリーを冷蔵庫から出してお供えしてくれた
その日、みんなで1回目のお参りをした
なんとも言えない安心感が体全体に広がった
地に足をしっかりつけて人生を歩んでいけそうな予感がした
私は、その日を境に、のどの圧迫感がすっかり消えてしまった
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