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行方不明者の墓~一家族の決断~【7】

 

「仏壇までは買えないけど、供養の場を整えたい。弟の写真を送ってもらえないだろうか?」

と、私は母に言った

 

行方不明の…死亡した証拠もない弟を供養する-

誰に認められなくてもいい

私一人の儀式でもいい…

そう思っていた

 

電話を切って、しばらくしたら

再度、母から電話がかかってきた

 

「お父さんが『もしそうだったとしたら、来年は23回忌だ。家族で法要でもしよう』って言ったの。施設に残っている戸籍を除籍して、認知死亡届を出して、お坊さん呼んで、戒名を付けてもらおうか!」

 

母がそう言った瞬間

 

私は、なぜだかわからないけど号泣した

「お母さん!ありがとう!…ありがとう!ありがとう!!」

私は、泣きながら母にお礼を言っている

 

母も泣いている

「ありがとう。なんだか、ホッとした。ありがとう…」

 

私が母にお礼を言うのは、ちょっとおかしい…

おそらく、弟が私の口を使って、母にお礼を言ったに違いないと思った

 

弟は、知的障害があって、話はできなかったが

きっと、こう言いたかったのかもしれない

【お姉ちゃん、ボク、もうそこにはいないんだよ。はやく気づいて!お父さんとお母さんに教えて!!ボク、寂しいよ~!!お姉ちゃん、どうして無視するの~?】

 

そして決意した家族に、どうしてもお礼を言いたかったのかもしれない

 

翌日、私は近くの仏具店に足を運んだ

おりんのセットと、ロウソク立て、香炉、花瓶などのセットを購入した

ホンモノ(?)は、実家で用意すると思われるので

私は、簡素に整えた

私の身の丈に合った、安くてシンプルだけどステキな道具だ

 

22年間も無視してしまったこともあり

お詫びも兼ねて、朝晩は必ずお参りしたいと考えていたので

身近に用意しておきたかった

 

ホームセンターで

小さなテーブル、座布団、道具を置くランチョンマットも購入

 

家に帰って、道具を整える様子を見て

小学生の3人の娘達は不思議がる

私は、正直に説明をした

 

「22年間も放っておいてしまったから、今日から22年間分のお参りをしたい。お母さん一人では、間に合わないから手伝ってくれるかな?」

 

小学校6年生の長女が自分で作ったゼリーを冷蔵庫から出してお供えしてくれた

 

その日、みんなで1回目のお参りをした

 

 

なんとも言えない安心感が体全体に広がった

 

地に足をしっかりつけて人生を歩んでいけそうな予感がした

 

私は、その日を境に、のどの圧迫感がすっかり消えてしまった

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