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行方不明者の墓~一家族の決断~【5】

 

失踪家族の存在をどうするのか?

そんな答えはすぐには見つからなかった

 

ただ、このままにしておくと結果はおのずと見えてくる

おそらく、家族はこの問題に言及しなければ

時間の経過で、両親がこの世を去ることになり

その場合、長子である私が

弟の身元引受人となる可能性が高い

 

いつも母が語る

「弟が見つかったら、私達が死んだ後、お姉ちゃん(私)に面倒を見てもらうから○○しなくちゃね」

というように、見つかることが前提の会話が続くのだ

その場合「もし、死んでたらどうするの?」なんてセリフはタブーだ

 

両親がこの世を去った場合

判断は、私と妹にゆだねられることになるだろう

戸籍はそのまま存在するのだろう

高齢を向かえた私達は、弟の戸籍をどうしようと考えるのだろうか?

失踪者は、人間の限界と思われる年齢まで放置されるのだろうか?

 

2010年の夏は

所在不明老人がマスコミを賑わした

常識では考えにくい年齢の人まで登場し

人は、死亡届けが出されなければ

存在していることになるのか?と

人事とは思えないニュースに判断を迫られるような気がしていた

 

おそらく、私が死んで

弟の戸籍がそのまま残ってしまったら

弟は、戸籍上では非常に長生きすることになる

 

誰かが、この沈黙を破り

弟の失踪事件に決着をつけなければ

いつまでも終わらないのだ

 

あやふやな希望だけを持ち

生きていかなければならないのは

とても残酷な話なのである

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