Home > Archives > 2017-06

2017-06

意祁と袁祁①

雄略天皇が崩御して雄略天皇の息子の白髪命(シラカミノミコト)が王位を継いだ
白髪命は皇族の中では唯一の皇位継承者だった
白髪命は第22代清寧天皇として即位する

しかし清寧天皇は、後継ぎを作らないまま崩御してしまった

雄略天皇が、ライバルたちを葬り続けたつけがまわり
とうとう皇位継承者が誰もいなくなってしまった

臣下たちは皇統存続の危機にさらされ
雄略天皇に殺された忍歯王(オシハノミコ)の妹である飯豊王(イイトヨノミコ)に政務を託した

初の女性天皇と言えば推古天皇だというのが周知の事実であるが
古事記では飯豊王が宮の名称まで書かれていて天皇として捉えていたふしがある
「仁徳天皇から推古天皇まで19天皇」と書かれているが
飯豊王を含めないと19人にならないことになる
正史上での初の女性天皇は推古天皇だが、それ以前に幻の女性天皇がいた可能性が高いことになる

男子の皇位継承者が途絶えてしまって
都には困惑が広がっていたが
そんな中、朗報が届くことになる

播磨の志自牟(現在の兵庫県三木市志染町)で、山辺連小楯(ヤマベノムラジオダテ)が
亡き忍歯王(オシハノミコ)の遺した子を2人見つけたという

意祁と袁祁という2人の皇位継承者の登場に
人々は安堵した

この兄弟は、それまで苦労の連続だった
雄略天皇に兄弟の父が蚊屋野(現在の滋賀県八日市市)で殺されると
兄弟は危険を感じてその場を離れて
苅羽井(現在の京都府木津川市綺田)に逃げた

この場所で強欲な豚飼いの老人に食料を奪われ
食べるものがないまま玖須婆(現在の大阪府枚方楠葉)の渡しを越えて
志自牟へやってきたのだった

兄弟は皇族の血を引きながら下層民になってしまい
馬の世話をしながら志自牟の豪族に従えていた

山辺連小楯がその豪族の宴会に行った際に
袁祁が自身の生い立ちを歌にして歌ったことから
その身分が発覚した

この情報は後継ぎを待ちわびている都へ早馬を使って伝えられた

兄弟の叔母で政権を預かっていた飯豊命は大変喜び
意祁と袁祁は皇位継承者として都に迎えられることになった

大長谷命の時代③

激しい権力争いで次々と身内を葬って
大長谷命は第21代の雄略天皇となった

その争いで見せた無慈悲とも思える様子は
皇位についてからもその片鱗を見せる

地方豪族の屋敷が豪華すぎるからといって焼き払わせたり
盃に落ち葉を浮かべたまま献上したことに怒り下女を殺そうとしたり
横暴な姿を古事記の中で書かれている

その一方で女性関係は優雅に描かれている
皇后となった吉野の童女、丸邇氏の娘である袁杼比売(オドヒメ)に歌をうたいながら愛をささやいたエピソードもある

そんな中で、雄略天皇にまつわる悲しい恋愛物語がある

ある日、雄略天皇は美しい少女であった赤猪子(アカイコ)を見染めた
赤猪子に将来宮に召すと約束をして、その約束を忘れてしまった

赤猪子は、その天皇の言葉を信じて待ち続けて
80年も経ってしまった

80年もの年月は美しかった時代の面影はなくなり
赤猪子は雄略天皇に対して、女の盛りを無駄にしてしまったと嘆いた
雄略天皇は虚しく過ぎ去ってしまった時間を想いショックを受けたのだった

一方、政治的には強権を振るい
国民から恐れられた雄略天皇の相反する弱い姿も古事記では伝えている

ある日、雄略天皇が葛城山に登った際に
大きな猪が現れて、矢を放つと猪が追いかけてくるので
木の上に登ったというエピソードがある

同じ葛城山では不思議な体験をする
天皇と同じ扮装をした一行が向かいの尾根に現れた
名前を聞くと、葛城山の一言主大神(ヒトコトヌシノオオカミ)だと答えた

雄略天皇は、神と聞いて拝礼し物品を献上すると
その一行は山の麓まで降りてきて天皇を見送ったという

この二つの話は、雄略天皇と葛城氏の和解とも解釈できる
葛城山は葛城氏の山であり
一言主大神はその氏神だ
その氏神を雄略天皇が敬ったということで
和解したことを伝えるエピソードになっているという説がある

雄略天皇の妃である韓比売(カラヒメ)は葛城氏の出身であることから
その時すでに力は弱まっていて
敵対する意味もなくなったと思われる

Home > Archives > 2017-06

 

このページのTOPに戻る