Home > Archives > 2016-04

2016-04

海佐知毘古・山佐知毘古②

海神国で火遠理命(ヒオリノミコト)と結婚した豊玉毘売(トヨタマビメ)は
妊娠していて出産の時期を迎えようとしていて
夫のもとにやってきた

 

火遠理命は身ごもっている妻のために
渚に産屋を作り、屋根を鵜の羽で葺いた

しかし産屋が完成しないうちに豊玉毘売の陣痛が激しくなり
産気づいてしまう

豊玉毘売は産室に入り
お産がはじまるときに夫に言った

「異郷のものである私は、本来の姿に戻ってお産をしますので、絶対にお産の様子を見ないでください」と
この言葉が気になって、我慢できなくなった火遠理命はこっそり覗いてしまう

そこには大きなワニに変身して、身をくねらせている妻の姿があった
火遠理命は恐ろしくなって、その場から逃げ出してしまった

本当の姿を火遠理命に見られてしまった豊玉毘売は
恥ずかしさのあまり故郷の海神国へ帰ってしまった

 

火遠理命と豊玉毘売の子供は

屋根を鵜の羽で葺き終わらないうちに生まれたので
鵜葺草葺不合命(ウカヤフキアエズノミコト)と名付けられた

 

火遠理命のもとを去った豊玉毘売は
置いてきた我が子が心配になり海神国から妹の玉依毘売(タマヨリビメ)を送った

成長した鵜葺草葺不合命は叔母である玉依毘売と結ばれて

4人の子供に恵まれた
五瀬命(イツセノミコト)、稲氷命(イナヒノミコト)、御毛沼命(ミケヌノミコト)、若御毛沼命(ワカミケヌノミコト)である

 

のちに次男の稲氷命は母の住む海神国へ行き
三男の御毛沼命は海のかなたにある常世国へ渡り
日向に残ったのは長男の五瀬命と四男の若御毛沼命で
若御毛沼命は別名を神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)といい
のちの初代天皇である神武天皇となる

なお山佐知毘古(ヤマサチビコ)こと火遠理命は580年間生き
陵墓は高千穂の山の西にあると書かれている

ここまでが古事記の上巻の神の話であり
中巻からは天皇が統治する人の代の話になっていく

海佐知毘古・山佐知毘古①

邇邇芸命(ニニギノミコト)と木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)の子どもに

兄の火照命(ヒデリノミコト)、弟の火遠理命(ホオリノミコト)がいる
この兄弟は当然、天照大御神の血をひく兄弟である

 

ある日、火遠理命は兄の火照命から釣針を借りて釣りをしていた

しかし、魚が一匹も釣れず
兄が大事にしていた釣針も紛失してしまった

兄に謝罪をしたが許してもらえなかったので、火遠理命は海辺で悲しんでいた
その時、塩椎神(シオツチノカミ)がやってきて、海神国へ行くように勧めた

塩椎神が編んだ竹籠の船に乗って沖に出ると
海神、綿津見神(ワタツミノカミ)の宮殿に到着した

海神は火遠理命を快く迎えてくれて、宮殿で歓待した
海神の娘である豊玉毘売(トヨタマビメ)も火遠理命に好意を寄せてくれた

火遠理命は豊玉毘売と結婚して

海神国で暮らし続けた

海神国での暮らしは瞬く間に過ぎ
気が付けば3年に月日が流れていた

 

3年経った時、火遠理命は兄の釣針を探していたことを思い出した
それを聞いた海神は赤鯛の喉に刺さった釣針を見つけてくれたので
火遠理命は故郷に帰る決意をする

 

火遠理命は帰る時に海神から

「兄を懲らしめる呪文」と「海の満ち引きを操る玉」を授かった

 

故郷に戻ってきた火遠理命が
「兄を懲らしめる呪文」を釣針にこめて兄に返したため

不漁が続き、兄の生活は貧しくなってしまった

火遠理命は「海の満ち引きを操る玉」を使って
満潮にして兄を溺れさせて
兄が助けを求めると潮を引いた

この結果、兄は火遠理命に逆らわず
火遠理命の護衛として仕えることを誓った

 

火照命の子孫である九州南部を出身とする隼人も代々朝廷の警護役を担うことになった

 

この神話は兄弟の争いを通じて
隼人の大和王権への服従の由来を語っている
実際には隼人は早い時期から中央との関係を築いてはいたが
たびたび反抗していて、警護役になったのは7世紀の後半になってからである

Home > Archives > 2016-04

 

このページのTOPに戻る