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2013-03

お墓の観念の変化

何度か、お墓についての記事を書いているが
この昔と現在のお墓に対する意識の変化が
内容をより複雑にしているように思う

昔は「先祖代々の墓」として、そこに代々入っていくのが普通であった
しかし現在は「◯◯家の墓」というものを建て
現在から未来の家族に対して意識が向いているように感じる

過去の墓から未来の墓へ
この意識の違いも大きくお墓の概念を変えるものである

お墓は、先祖を奉り敬うものから
家族であることの証明へと意識が変化し

そのことにより、お墓を語る上で
「家族とはなにか?」という意識を確認する必要がでてくる

三世代家族が普通だった時代から核家族や一人暮らしなど
家族の形態も変わってきている
そんな中でお墓を共にすることは
紛れも無い家族の証明であろう

近年では、ペットも家族だから一緒のお墓に入りたいとか

夫の死後、夫とお墓まで一緒なのは耐えられないから
個人墓を購入し、自分の死後はコチラにして欲しいという人とか

お墓は、その人の感情的な部分も左右するものへと変化してきている

昔のお墓は、代々そのお墓に自動的に入っていくもので
そこには個々の感情的な事情は配慮されることはなかった

基本的に現代は、結婚を中心とした家族を形成している関係上
そのスタートラインが情から入っているので
その延長線上にあるお墓の観念も情に向けられるのかもしれない

子どもが家を継ぐとか
家族を直系で伝承していく概念も薄くなってきていて

その二世代を中心にした核家族は
その子ども達が、また結婚することにより
一旦リセットされ、また情で繋がる家族を形成する…となる

世代を線で結ぶ意識より、点で終了して情で判断する意識
このような変化があって
お墓は、昔のまま…というわけにはいかないだろう

子どもの情(感情)を大切にするあまり
自分の死後、先祖として崇拝してもらい
お墓を維持してもらおう…という意識が薄くなってきている

そして、お墓は「先祖供養」という大きな柱から
自分の死後設計という意識に変化しているのである

お墓の性格の変化

お墓は何のためにあるのだろうか?

昔、土葬であった関係上

その人の「死骸」が埋葬され、大地へ還っていく時間的経過を過ごす場所と考えられてきた

これが、物質的な時間経過

そして、身内が死を迎えることに

残されたもの達は、その死を受け入れ、もとの生活に戻り、もとの精神状態に戻るまでには

時間がかかる

その精神的な時間経過を過ごす場所として、お墓や墓地が存在すると考えられる

その物質的、精神的な時間経過を支えるお墓や墓地の性格に変化がみられるようになった

現代社会の変化とともに、ライフスタイルも変化し

その最終地であるお墓にも当然のように変化が表れてきたのである

昔、お墓とは

自分の存在の絶対的な尊厳を持った存在の先祖がねむっている

その崇拝すべき存在がある場所であるがゆえ、必然的に尊厳性が出てくるのである

そして、その存在を未来永劫、代々受け継いでいくために

親族一同が守っていく

この永続性も重要な要素であった

最後に、固定性

昔は、同じ土地で生まれ、育ち、仕事をして、家族を持ち、老いていき、そして死を迎える…

同じ土地で人生のスタートからゴールまで完結していたのである

その意味でも、お墓の固定制は、必然なものとなってくる

このように、昔はお墓と言えば

「尊厳性」「永続性」「固定性」という性質を当然のように持っていた

しかし、現代では、この3つの性格を守っていくことは難しくなってきている

最近では、「ご先祖様のおかげで…」とか「ご先祖様に感謝する」などの言葉を聞かなくなってきているように思う

昔はよく、特別恵まれた人に遭遇した場合など

「この方は、どれだけご先祖様が徳を積まれてきたのだろう…」

と感嘆の言葉を述べることも多かった

何かあれば、全てはご先祖様のおかげなのだ

そうして、自分の存在ばかりではなく

自分の身に起こる幸福に対しても、ご先祖様の行いのおかげだと感謝する

そんな日常においては、お墓や仏壇の存在が非常に需要になってくるのは当然である

ご先祖様を意識することなく、ライフスタイルも流動的で

転勤も多く、親戚一同が同じ部落にいる…ということが少なくなってきた現代では

お墓の存在そのものが、とりあえずの儀式になって

残された人間の便宜上の都合でお墓のスタイルを変化させるようになってきている

現代社会に生きている私達に

昔のような、お墓のあり方を押し付けることは難しいことだが

今の自分の存在をご先祖様に感謝する習慣だけは

子ども達にも伝えていきたいものだ

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